若者減少に悩む地方では、「若者に一度この地域を訪れて欲しい、できれば短期間で良いから実際に住んでみて欲しい」と願い、様々な工夫をこらす自治体が増えています。地域の良さを知ってもらって将来の定住につなげようという試みです。しかし、全国には、毎年のように多くの若者が転入している地域が以前から存在していることにお気づきでしょうか?
「地域経済分析システム」(RESAS)を使って山口県(2014年)を例に見ると、20歳代の若者が転入超となっている相手先都道府県の第1位は、以外にも奈良県(83人の転入超)です。なぜ奈良県から山口県に若者が転入してくるのか?詳しく見ると、奈良県奈良市から山口県防府市へ、毎年20歳代の若者が大勢転入しています。これには特別な背景があるからに違いありません。
奈良市と防府市に共通しているのは、航空自衛隊基地の存在です。航空自衛隊のパイロットになるコースとして、奈良基地の幹部候補生学校を経て防府北基地での飛行訓練があるのです。他にも、広島県呉市や長崎県佐世保市など、自衛隊基地の存在によって毎年県外から多くの若者が転入している地域がいくつも見られます。もちろん、彼らは住むことを目的に転入してきた訳ではないので定住には至らず、そのうち別の地域に異動となります。しかしながら、滞在期間中にその地域の良さを知れば、親族や知人にPRしてくれるし、時には家族の住居として選択してくれることもあります。
こうしてみると、若者を呼び込むための「仕組みづくり」の段階で苦労している地域に比べて、自衛隊基地や大企業の工場・事業所などを抱えている地域は若者の転入が多く、若者獲得の可能性について既にアドバンテージがあるといえます。ただし、転入してきた彼らは果たして「住みたい地域」と感じているでしょうか。逆に「住みたくない街」と思われているとしたら、若者の定住はおろか、流出に歯止めがかかるわけがありません。与えられたチャンスを逃さないことです。