新型コロナの影響はあまりに大きく、先の見えない状態となっています。そんな中で、企業の存続に向けて模索していらっしゃる経営者の皆様のヒントにしていただければと、過去に私が触れた事業展開や経営の事例を紹介します。
最初は、いまから30年以上も前、日本経済がプラザ合意後の円高不況からようやく立ち直りはじめた頃の話です。
徳島県の経営者から「山に生えている木の葉っぱを売ろうとしている人がいるのだけど、そんなものが事業になるだろうか」と聞かれました。日本料理の飾り付け用として様々な葉や木の実などを販売しようというのです。私は「商品の単価が安い上に配送コストがかかり、固定費として人件費が大きな負担となるので利益を出すのは難しい。もし、やるなら県内に売るのではなく、旅館や料亭の多い京都、大阪、神戸を市場として大量に売ることです。」と常識的な返答をしました。それから数年後、この事業が大きく成長していると聞き、驚きとともにどのようなビジネスモデルなのか大いに興味を持ちました。それが皆様もご存じの「葉っぱビジネス」、現在の「株式会社いろどり」です。
この事業は、私の常識をすべて覆していました。市場は関西にとどまらず、最初から大消費地である東京に飛び込んだこと、葉っぱの採集は社員ではない町内の高齢者にお願いしたこと、事業体として利益を上げるのではなく、高齢者の副業とその収入を増やそうとしたこと等々。
今でこそ地域活性化や高齢化対策、農商工連携の成功例として注目されていますが、初めからこのビジネスモデルを目指していたわけではなく、地域の高齢者の仕事と収入を確保することを目的に試行錯誤した結果、宅配便の普及による運送コスト低減と配達時間短縮、バブル経済の到来による高級料亭からの需要増といった外部環境にも恵まれ、ビジネスとして定着・拡大したのです。
30年以上も前の若かりし頃のこととは言え、常識にとらわれてしまって見る目のなさを露呈した自分を反省しつつ、ビジネスモデルを検討する時には思い出して教訓としています。